Interview

数理工学のバックグラウンドを活かし、技術課題へ挑戦を続けたい

Adtech Studio  成田 敦博

今回はアドテク本部の新規事業チームのMLエンジニアである成田 敦博さんへのインタビューです。
成田さんは2015年に中途入社後、MLエンジニアとして複数のアドテクノロジー関連プロダクトの立上げに携わり、現在はブランディング広告を配信する新規事業に参画しています。

また、2016年から現 理化学研究所 離散最適化ユニットのユニットリーダー 前原 貴憲氏との共同研究を続けています。

それでは、まず成田さんのキャリアについて教えてください。

機械学習の研究で2013年に情報理工学の修士過程を終え、ウェブ系の会社でインフラの運用などを経て2015年にアドテクスタジオに転職してきました。

もともと大学で数理工学をやっていたことも関係して、コンピューターが高速に賢い判断をし続けることでビジネスを動かす構造に興味があり、インターネット広告の世界に入りました。
アドテクスタジオに入社したあとは、主にサーバーサイドエンジニアとしてプロダクトに導入するロジックを作るなどの広告配信システムの開発や新規プロダクトの立ち上げを切り盛りする一方で、大学や理化学研究所の先生と一緒に共同研究を行うアカデミック寄りの活動にも関わっています。

サーバーサイドエンジニアとして広告配信システムへの携わり方はどのような形でしたか?また、新規プロダクトの立ち上げに活きた経験があれば教えてください。

アドテクスタジオにやって来て最初の仕事は、CTR予測ロジックを実装することでした。予測モデル自体はほかの方が作ってくれていたのですが、それを実際にプロダクトで動かすためにいろいろ手間が必要で、予測器を再実装する際にはパフォーマンスにかなり気を使いましたし、バグや予測の悪化をふせぐため複数のテストや監視を用意する必要がありました。この案件を通じて、機械学習を実サービスで動かす際の大変さやノウハウを肌で感じることができました。
その後はプロダクトを運営していくための機能開発を行ったり、ときには泥臭い運用や障害対応を経験しながら、インターネット広告について内側から学んでいけたように思います。

その後、新規プロダクトの開発に移りましたが、既存プロダクトの作り方がかなり参考になりましたし、計測やログ処理の設計など、広告プロダクトをデータドリブンで運用していく考え方についても、それまでの経験のおかげでかなり見通し良く開発にとりかかることができたと思っています。もちろん既存サービスの技術的負債は引き継いではいけませんし、新しい目的を持ったプロダクトでもあるので、チームメンバーとたくさんのことを議論しつつ開発を進めてきました。

MLエンジニアとして活躍されていらっしゃいますが、エンジニアリングスキルを中心として、理数系のバックグラウンドはどのように活かされていますか?

冒頭でも述べたように私のバックグラウンドは機械学習系で、その上で言いますとアドテクノロジー領域で配信システムを開発するにあたって、理数系の知識や経験が必要とされる場面は非常に多いと感じています。

まず、これは必ずしもアドテク領域に限った話ではありませんが、ほかの大規模サービスと同様にソフトウェアエンジニアリングのスキルが非常に重要になってきます。特に私が携わる広告配信サーバーは、トラフィック量が大きく、レスポンス時間を短く保つ必要があるなどの点で通常のwebサービスよりも要件が厳しいことが多く、最適化を考えていくにあたってコンピューターサイエンスの知識を借りることがしばしばあります。

さらに重要な点としてデータの活用があります。
オンライン広告では、「ユーザーがウェブ上をどう行動し、広告配信をおこなった結果として、どんな効果が得られたのか」をかなりの部分で客観的に計測することができます。いろいろなデータが集まってきやすい環境であり、これらのデータをもとに、より良い広告配信をしていくことが競争力に直結する世界です。
典型的には機械学習を使ってクリックなどの予測モデルを作ることであったりしますし、あるいは過去実績から配信設計を考えることかもしれませんが、日々の意思決定がデータに寄って支配されているので、広告配信システムを作り運用していく中において「数理的に考える能力が生きるポイント」は、非常に多くあります。

大学院で研究していた内容を、必ずしも直接的に事業に対して扱えるとは限りませんが、「データに対して仮説を立て、数理的に評価できる能力」は非常に役立ちます。
アドテクスタジオには数学や物理学なども含めて理数系のバックグラウンドを持つエンジニアが多数所属しており、それぞれの強みを生かして業務にあたっていると思いますし、一緒に議論できることはとても楽しいです。

IJCAI(国際人工知能学会)における共著論文の採択、おめでとうございます!
理化学研究所の前原先生と行っている共同研究について教えてください。


前原先生とは2016年ごろにお会いして共同研究が始まりました。
今回採択された論文は「ブランディング広告のための最適入札戦略」で、インプレッションのたびにオークションが開催され、オークション勝者に広告表示権が与えられるリアルタイム入札での、ブランディング広告の効率的な配信手法を提案しています。
もともと自分が担当し開発していたプロダクトにあった予算ペーシングの課題を解決しようとするところから共同研究が始まったのですが、前原先生と議論を進めるうちに「ブランディング広告に対して予算ペーシングのアルゴリズムを応用できるのでは」と、方向性が見えてきました。

これまでのオンライン広告は、クリックやコンバージョンといった指標がきちんと計測できる場合が多く、それゆえデータを使った最適化もやりやすかったのですが、「ユーザーのブランド認知」は直接観測できないので、高度な分析や最適化をするのが困難です。
そこで今回は、ユーザーのブランド認知に関して ”エビングハウスの忘却曲線” と呼ばれる概念を用いた仮説を立てて、その仮説の中でのリアルタイム入札のための配信アルゴリズムを提案しました。
前原先生が主著として論文を書いてくださり、何度か国際会議に投稿を重ねてようやく今回採択に至りました。
アルゴリズム自体は単純ですが、リアルタイム入札とブランディング入札を組み合わせ、モデルに忘却曲線を用いる発想が評価されたようです。

こちらについては、2018年7月にスウェーデンでIJCAI-ECAI-2018の本会議が開催されたため、前原先生と共に学会へ参加してきました。

共同研究論文:「ブランディング広告のための最適入札戦略」
本会議の初日に、採択された共同研究論文「Optimal Bidding Strategy for Brand Advertising(ブランディング広告のための最適入札戦略)」を前原先生に発表していただきました。多くの方が聴講に参加してくださり、ポスター発表においても何名かの研究者の方と意見交換することができました。
(カンファレンスの様子についてはこちらのブログ「IJCAI-ECAI-2018 で発表してきました」をご覧ください)

実際にプロダクトで使えるようになるまではまだまだ改良が必要ですが、ブランディング広告の課題をエンジニアリングで解決していく上での第一歩にできるかもしれないと思っています。

今後、取り組んでいきたい事について教えてください。

統計学などのバックグラウンドを活かし、MLエンジニアとしてソフトウェアエンジニアリングのスキルをもっと伸ばしていき、実際的な技術課題を解決していくことをやっていきたいと思っています。したがって、「現在自分が担当しているプロダクトの完成度を高め、エンジニアの立場からビジネスに貢献していくこと」この点を最も大きな目標としなければならないと感じています。

このために広告配信を向上させるべくいろいろなアルゴリズムを試行錯誤していきたいと思っていて、その中で新たな発見や研究課題が見つかるかもしれません。そのときは前原先生と一緒に検討しながら、今回の研究を改良したり、新たな研究の種が見つかれば、それを発展させていきたいなと思っています。

アドテクスタジオには、リサーチャーがあつまるAI Labがあり、彼らもどんどん国際学会に論文を提出しています。自分は研究者ではありませんが、いくつかのプロダクト開発に携わってきた経験と数理のバックグラウンドがあることを活かし、これからも共同研究のようなアカデミア寄りの活動は続けていきたいと思っています。

成田さん、ありがとうございました。

成田 敦博Adtech Studio MLエンジニア

2015年中途入社後、成果報酬型DSP「Smalgo」やブランド広告企業向け広告配信サービス「CA本部DSP」などプロダクトに参画、2017年より新規事業チームに参画。
サーバーサイドエンジニアとして、一貫して広告配信ロジックの開発などを中心的に取り組む。MLエンジニアとして数理工学のバックグラウンドを活かし、プロダクト開発と並行し、理化学研究所との共同研究プロジェクトを担当。

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