adtech studio

広告クリエイティブ制作と機械学習

By Kota

info コンピュータビジョン 機械学習

広告において、バナー画像や映像、コピー文言などの制作物はクリエイティブと呼ばれます。近年のデジタル広告市場の拡大に伴い、品質の高いクリエイティブをより効率的に作ることが広告制作側の課題となってきました。広告クリエイティブは広告主、プランナー、デザイナーなど複数の人が関わって作り上げられます。サイバーエージェントAI Labではクリエイティブ制作をスケールアップさせるために、機械学習を用いて制作を支援したり、自動で生成するような技術を研究開発しています。

機械学習データとして見た広告クリエイティブの特徴

例としてバナー広告を考えてみましょう。バナーは画像や動画として捉えられることがありますが、自然な写真などと比較すると、写真、イラスト、タイポグラフィなどの視覚要素を空間的・時間的に複雑に配置したプレゼンテーションフォーマットであると言えます。(図1)昨今の画像認識や自然言語処理の技術で使われるデータ形式とは異なり、素材選択、レイアウト構成、といった制作・編集工程そのものがデータとなっています。

図1:バナーのレイアウト例

クリエイティブ編集データはAdobe PhotoshopやIllustratorといったプロフェッショナル向けツール用の専用データ形式で保存されることが多く、一般画像のようにWebに大量に存在するわけではありません。そのため、大量のデータを必要とするような機械学習モデルを学習することは容易ではありません。また、制作プロセスが複雑なため機械学習で解ける問題設定を定義するところも工夫が必要となります。こうした理由から、機械学習を使った制作自動化に関する学術研究はあまり多くみられてきませんでした。

最近では敵対的生成ネットワーク(GAN)をはじめとした生成モデルを使って画像の生成やスタイル変換を自動化する手法が知られるようになってきましたが、この記事を執筆している2018年の段階では、入力を広告訴求素材として実用レベルの高品質なバナーを出力する汎用的な生成手法は知られていません。出力となるバナーに輪郭がぼやけるなどの不審な箇所が少しでもあってはいけないという厳しい要求に加え、バナー制作では編集データというベクトル形式のグラフィックスデータを取り扱う必要があることが、理由に挙げられます。

取り組むべき課題

AI Labではクリエイティブ制作を対象とした機械学習手法の開発に向け、社内の広告代理店業務で制作される編集データの基盤(図2)を整備するとともに次のような課題に取り組んでいます。

図2:バナー画像の大規模データ基盤、大量の編集データを再利用可能な形で収集

データ分析基盤整備

  • クリエイティブ編集データの解析ツール開発(psd-tools2
  • 編集データの統計分析と検索基盤開発

広告視聴分析

制作編集支援

  • ストック素材画像のスタイル編集
  • バナーレイアウトの自動配置
  • レイアウトデータへの自動画像描画
  • 検索連動型広告のタイトル記述の自動生成

広告配信の最適化

  • クリエイティブのクリック予測
  • 広告配信ロジックの最適化

最後に

広告クリエイティブを対象とした機械学習研究はまだまだ発展途上にあると言えます。AI Labでは研究を進めるとともに、得られた成果を論文やオープンソースソフトウェアとして世の中に公開していきます。(論文一覧はこちら)将来的にクリエイティブ分野に機械学習的な知見が蓄積することを楽しみにしています。